クリーンウエアの種類と管理方法

 クリーンルーム用衣服(クリーンウエア)とは

クリーンウエアは、ゴミ・異物を嫌う清浄環境(クリーンルーム)において、汚染防止・クリーン化の為に重要なアイテムです。クリーンウエアの選定と維持管理は、そこで作業をする要員管理と並んでクリーン化活動の根幹となる位置付けと言えます。
クリーンウエアを正しく選択し適切に維持管理し、クリーンルームに関する正しい知識を習得して決められたルールを守って行動することによって、はじめて目的とするクリーン化が達成されることになります。

求める清浄度の維持は、製造品目やその加工における自動化レベルによって異なりますが、

①クリーンルームの性能 × ②要員数と配置 × ③クリーンウエアの性能=清浄度レベル

の掛け算となります。
求められる清浄度が低いからと言って換気回数の少ない乱流式(非一方向流)クリーンルームで、大勢の作業者が管理をしていないクリーンウエアを着用して作業をすれば、低いレベルの清浄度すら達成できないことになります。それぞれが適切な管理状態を守り、維持してはじめて目標とする清浄度が達成され、
効率的な生産活動が出来ることになります。

クリーンウエアを無塵衣と呼ぶ人がいますが、無塵の衣服はあり得ません。塵埃を防ぐ、防御する衣服の意味から『防塵衣』と呼ぶことが適切でしょう。防塵衣はその生地性能や縫製方法、デザインによって異なりますが、一般着の発塵状態個数を1/10~1/100に抑えることが可能となります。

防塵衣のメーカーでは、生地の物性で防塵衣のランク分けをし、
発塵濃度、捕集率、通気性、摩擦帯電量 等などの項目があります。
作り込む製品に合った防塵衣の選定と適切な維持管理で歩留まり向上につなげたいものです。

【生地の物性評価時に使用する用語の解説】
◆◇発塵濃度◇◆
タンブリング法発塵試験を行い光散乱式粒子計数器でカウントした値

◆◇捕集率◇◆
粒子透過性測定(試料をホルダーに挟み大気塵を透過させ、
試料の前後の粒子を光散乱式粒子計数器で計数する。
吸引圧1cmH2Oで測定)を行い試料前後の粒子数から捕集率を計算する。

◆◇通気性◇◆
1秒間に1cm2あたりの生地に何cm3(cc)空気が通過するか

◆◇摩擦帯電量◇◆
生地をある一定条件で回転するドラム(ドラム壁にアクリル)で回した後、
ファラデーケージに入れ、その生地の帯電電圧を測定した後、
電荷量を計算で求める。

◆◇摩擦帯電圧◇◆
生地をある一定条件の装置で擦りながら、その生地に発生する帯電電圧を測定する。

◆◇引裂強度◇◆
ある規定の大きさにカットした生地を引裂き試験機で引裂ける迄の強度。

◆◇引張り強度◇◆
ある規定の大きさにカットした生地を引っ張り試験機で引ちぎれる迄の強度。

◆◇マーチンデール摩耗◇◆
試験試料を所定の荷重の下で、標準摩擦布により摩擦します。
予めセットした摩擦回数に達した後に試験片を調べ、
織物は糸が2本以上切れるまで(編地は1ヶ所穴があくまで)操作を繰り返します。

クリーンウエアの種類 (デザイン/仕様による選択)

クリーンウエアは大きく分けて、セパレート(上下分離)タイプとつなぎ服タイプがあります。
作り込む製品のレベルによって使い分け、どちらかを選択することになります。
日本空気清浄協会(JACA)の、クリーンルームの運転管理指針では、
クラス1000以上の清浄度を求める場合では、つなぎ服(ワンピース)を使用するとしています。

◆◇つなぎ服タイプのクリーンウエア◇◆
メーカーによって素材やデザインの違いがあります。
以下の図に代表的なデザインを清浄度レベルに当てはめて示します。
一般的につなぎ服タイプには、頭巾タイプのフードを被り、
靴は膝下まで覆うロングカバー付きのブーツを使用します。(写真参照)

裾の開いたデザインがありますが、
これは一方向流クリーンルーム全面ダウンフロー領域で使用されるデザインです。(写真参照)

裾からの発塵がダウンフローによってグレーチングの下(床下)へ直ちに排出されることを利用して、開放構造にしています。乱流式(非一方向流)、ベタ床構造のクリーンルームでの使用には適しません。

 ◆◇セパレートタイプ(ツーピース)のクリーンウエア◇◆
一般的に清浄度クラス10000レベル以下の低い清浄環境で用いられます。
上着を捲ると直ぐに一般衣が露出するので注意が必要です。
セパレートタイプの場合、冬季に繊維発塵の量が多くなることが知られています。
出来れば、上着の裾をズボン(パンツ)の中に入れることをお薦めします。
上着の裾をズボン(パンツ)の中に入れると「恰好悪い」と言う理由で
ルールが徹底出来ないと言う声を聞くことが多くあります。
このような場合や繊維ゴミが多く問題になる場合は、つなぎ服タイプをお薦めします。

クリーンウエアの管理

クリーンウエアは適切に選定され、管理する必要があります。
下の図は、人間からの発塵機構を示しています

クリーンウエアを着用していても、人は多くの塵埃を発生しています。
発塵は、機構的に『漏洩』『透過』『剥離』に分類されます。
それぞれの要因は下記の通りです。
『漏洩』:デザイン、素材、サイズ、内衣、適切な着用、化粧
『透過』:素材、劣化、損傷、内衣
『剥離』:素材、劣化、損傷、着脱時の汚染、環境からの逆汚染、クリーニング

実際の発塵は、クリーンウエアのスタイルやその素材といった衣服固有の性能によるものではなく正しい着用方法、クリーニング等の衣服の管理によって大きく影響を受けることもよく知っておいてください。
クリーンウエアの管理について、クリーンルーム運転管理指針(日本空気清浄協会NO.14C)には『クリーンルーム用衣服管理基準』を作成し、それに従って管理する必要がある。』と記されています。
クリーニングが完了したものの受入検査から、所定の使用期間を経てクリーニングに送られるまでの全期間にわたり、注意深く管理を行わなければなりません。そのため専任のクリーンルーム衣服管理者を設けて管理することが良いでしょう。

◆◇管理項目◇◆
1.新品及びクリーニング後の受入検査(数量,サイズ,包装,汚染測定,保管場所に保管)
2.各使用者への適切な支給(作業者のサイズに合ったもの)
3.着衣・脱衣の過程の管理
4.状態(汚染,損傷)検査からクリーニング周期の決定(※1)及び廃棄の時期の決定
5.修理⇒⇒穴あき、裂かれなどは 基本的には修理はせず、廃棄する。
6.保管(専用の保管場所,作業毎,クラス毎,クリーンルーム清浄度と同等の場所)
7.メンテナンスで汚れた服のクリーニング出しの前洗濯
  (注意:油等の汚れが付いたままクリーニングへ出さないこと)

※1 クリーニング周期の決定 
考え方:作り込む製品によって強弱をつける。
*毎日使用前に行なう汚染粒子測定の結果、あらかじめ定めた経験値、不意の汚染時等により決める。
*全数を同一周期で行なう。(高清浄域では一日、それ以外は適宜決める)
*概ね36~40時間使用毎にクリーニングすることが妥当とNCCでは考えています。

クリーニングについて

 

 

◆◇クリーニング工程の知識◇◆
*衣服を使用するクリーンルームより清浄度の高いクリーンルームで洗濯、乾燥、たたみ、包装を行なう。
*洗濯は水温管理した水にクリーンルーム専用洗剤を使用し、すすぎには純水又は超純水を使用する。
*乾燥はフィルトレーションした清浄な空気を通して行なう。
*乾燥終了後、クリーンルーム内で折りたたみ、清浄な袋に収納する。

◆◇NCCのクリーニングサポート◇◆
NCCは専用のクリーニング部門を持っています。お問合せお待ちしております。

◆◇専用クリーニングの効果◇◆
1.発塵量効果事例:タンブリング試験結果事例

2.Na(ナトリウム)イオンの除去
作業者から発生する汗によるNaイオンが除去できる。
Naイオンは電子部品では、非常に大きな汚染として性能劣化等の影響が現れる。

防塵衣使用者の心得

 

 

防塵衣の性能を発揮するためには、防塵衣を着る作業者/人間が正しい知識を持ち、
正しい着方、管理ルールを守らなくてはなりません。

1.防塵衣の清浄度を保つ
*防塵衣は、定期的にクリーニングに出すこと(一般的には1回/週)。
*一般作業用とメンテナンス等の汚れる作業用で防塵衣を区別し共用しない。
*二次更衣室はいつもクリーンに維持する。
*上履きと防塵靴を同じロッカーに入れないこと。
*作業衣と防塵衣を同じハンガーに掛けないこと。
  (作業衣と防塵衣を分離することにより、作業衣の塵埃が防塵衣に付かない。)
*汚れている防塵衣を着用している人を見つけたら、すぐに指摘し交換してもらう。

2.正しい着用をする 
*帽子(頭巾)のすそは、防塵衣の中にきちんと広げ納めること。
*首周りのファスナーまたはマジックテープは正しく留めること。
*ウエストの紐は締めること(紐がある場合)(ポンピング現象防止)
*身体に合った防塵衣を着用すること。
*帽子の中で頭だけが動かないこと。
*防塵衣着用での動作はゆっくりと行う。(ポンピング現象防止、床の塵埃舞い上がり防止)

3.破損の無い防塵衣を着用する
*破損、ほころび等がある防塵衣は着用しない。
 (一般の縫製方法では針穴があいてしまうため交換することが望ましい)
*破損しなくても、袖口のゴムが緩んでいたら交換又は修理してから使用する。
*安全ピン等を刺さないこと。(防塵衣に穴があき、内部の塵埃が漏れる)

クリーン化技術|クリーンルーム

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